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zoom RSS 明治30(1897)年旧制第一高等学校の数学入試問題

<<   作成日時 : 2012/12/07 16:59   >>

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旧制第一高等学校石碑

 入試の合否で、その人のその後の進路が変わるといことは往々にしてあります。中でも数学の出来栄えが合否を左右されるというケースが多いと書物などを読んで感じます。写真は、文京区東京大学農学部構内に建っている向陵碑(旧制第一高等学校)です。
 今回出題する問題は、明治30(1897)年の旧制第一高等学校(現東京大学教養学部の前身)の数学の入試問題です。内容は割合と2次方程式です。現在の数学でいうと高校1年レベルです。

旧制第一高等学校の数学の入試問題

 明治30年というと明治維新から30年、西洋の学問が日本に入ってまだそんなに時は経っていません。これより遡ること13年前の明治17(1884)年の大学予備門(その後第一高等学校に名称変更)の試験には「坊っちゃん」「吾輩は猫である」でお馴染みの作家夏目漱石や「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の歌人正岡子規が試験を受けています。その時の数学の試験は英語で書かれたものです。その時分は日本語で書いた教科書はありませんでした。明治30年あたりから日本人の先生が日本語で書いた教科書で教えるようになりました。

 上の入試問題は、作家永井荷風が第一高等学校を受けた時の数学の問題です。永井荷風は、数学が不得意だったから一高の試験を落第したと述懐しています。一高に入学すれば東京帝国大学は無試験で入学ができ、悠々自適な生活を送ることができました。荷風にしてみれば落第しても悠々自適な生活を送りましたが、荷風のように他に才能が有ればの話です。また、荷風以外にも数学で落第して文筆家で成功した人に「浮雲」「平凡」の作品で今でも愛読者を多くもつ二葉亭四迷がいます。二葉亭四迷は陸軍士官学校に3回落第しました。

 荷風は代表作の一つである「すみだ川」に当時の一高の様子を書いています。
< 若し入学すれば校則として当初の一年間は是非とも狂暴無残な寄宿舎生活をしなければならない事を聴知っていたからである。高等学校寄宿舎内に起こるいろいろな逸話は早くから長吉の胆を冷しているのであった。いつも画学と習字にかけては全級誰も及ぶもののない長吉の性情は、鉄拳だとか柔術だとか日本魂だとか云うものよりも全く異った他の方面に傾いていた。>
 写真下は、文京区にある森鴎外記念館に展示している永井荷風の碑です。
森鴎外記念館にある永井荷風の碑


 荷風が入学しようとしていた一高は全寮制で、今では考えられない武闘派集団でした。それもそのはずで一高に入学してくる学生は士族出身者が多く占めていました。教授の中には戊辰戦争を経験している元会津藩士もいました。ほんの20年前は西南の役、30年前は戊辰戦争があり、親兄弟には戦争に参加したものも少なくなったのです。
 武闘派ぶりは入試問題の文面を見てもわかります。18歳前後の学生が受ける試験に酒樽が登場します。今のセンター試験にビール、酒、ワイン、たばこなどの文言が入った問題を出題すれば、出題者は当然謝罪会見を開くことになり、不謹慎ということで責任者は更迭騒ぎになると思います。

 明治39(1906)年に「武士道」の著書新渡戸稲造が校長に就いてから一高は武闘派のバンカラから教養を重視するハイカラに変貌していきます。日本もこの時期あたりから日露戦争の勝利も重なって近代化に拍車がかかってきます。 
 世の中にはサラリーマンの出現で中産階級者が徐々に増えていきます。社会、家庭環境が変わるにしたがって一高に進学する学生像も変化していきました。その度に入試制度も紆余曲折の連続でした。ちなみに、「蜘蛛の糸」「杜子春」や芥川賞で有名な芥川龍之介や「受験生の手記」を書いた久米正雄は推薦で一高に入学して、東京帝国大学に進学しています。

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解答

 東京帝国大学卒業生は特権を持っていました。国家建設のためにエリート教育を集中的に行うことを目的に東京帝国大学に特権を与えたのは初代総理大臣伊藤博文です。それまでの東京大学卒業生は特権などありませんから、福沢諭吉の慶應義塾、東京商業学校(現一橋大学)など実務的な学校に学生が流れていました。また、明治14年の政変で下野した大隈重信が創立した東京専門学校(現早稲田大学)は、10年後の国会開設に備え、人材を育成し始め、伊藤にとっては脅威でした。
 伊藤は、工部省の工部大学校(現工学部)、司法省の法学校を東京大学に吸収させ、法医工文理の総合大学にして東京帝国大学にしました。
 東京帝国大学法学部を卒業すると、高等試験を受けることなく高級官吏になり、少しの見習い期を経て地方の税務署長に就任します。医学部を卒業すれば国家試験なしに医者になり、学校の先生も国家試験なしです。東京帝国大学を卒業すれば、自分の進路は思い通りになり、俸給もその他の学校の卒業生よりも飛び抜けて高くなります。東京帝国大学の教授の俸給も他の帝大よりも多くもらいました。東京帝国大学に進学するために受験生は一高を目指しました。一高から東京帝国大学に進学することはエリート中のエリートでした。他の旧制高校から東京帝国大学に入学したよりもランクは上だったのです。
 ブログ「名著を読む」に、瀧井一博「伊藤博文 知の政治家」の読書感想文を掲載していますので参考にしてください。
東京大学駒場校舎にある一高の碑

 写真上は、東京大学駒場キャンパスにある一高の碑です。一高は昭和になって本郷から駒場に移転しました。
 現在の東京大学卒業生には特権などはありませんが、原子村でも明らかになりましたが、各省庁の高級官僚や日本銀行、裁判所などの組織の要職もなぜか東京大学出身者で占められています。戦前から続いている慣習なのでしょうか。学生時代に同じ学校で同じ教授から同じ教育を受けた人が国の中枢に固まることは多様性が失われ、議論が深まりません。そのうちに組織は柔軟性を失い、腐敗を起こしていきます。今、日本が置かれている状況はまさにこれに当てはまります。
 今度の衆議院選挙で統治機構が変わることを期待します。

 最後に、上の入試問題の文面はみなさん読めましたか。百数十年前に書かれた日本語です。今回の衆議院選挙でも日本の文化伝統を守ると宣伝している候補者はたくさんいます。
 しかし、伝統文化を守るとは何なんでしょうか。百数十年前に書かれた日本語も読めなくなった日本人が果たして伝統文化を守れるのでしょうか。みなさんのお父さん、お爺さんは残念ながらもう読めません。そんな教育を施してはくれませんでした。グローバル化と称して英語教育には力を入れますが、日本の伝統文化も知らない日本人が英語で何を会話するのか疑問です。そんな人は世界で活躍することなどできません。漢文、古典の授業はもっともっと増やす必要があります。
 名所、旧跡、景勝地には石碑や案内板が建っています。特に戦前に建てたものは漢文や旧字体で書いてあります。これらの漢文や旧字体がすらすら読めるようになったら歴史にも興味を抱くようになるかもしれません。伝統文化を守るというのであれば、まずは漢文、古典を教えるべきです。
 東京駅が、この10月に開業当時の姿になって甦りました。筆者も何回も見学にいきましたが、人気場所はもちろんのこと、周りのビル群に至るまで常に人で一杯です。見学者は哀愁にしたり飲食やお土産にお金をつかいます。この光景を見て文化は経済を活性化させると直感しました。下手な経済政策よりも根本を見直して長期的視野で文化伝統を守ることが結果として経済発展になるのではないでしょうか。

 ブログ「名作を読む」には、永井荷風作品二葉亭四迷作品夏目漱石作品芥川龍之介作品、ブログ「名著を読む」には新渡戸稲造「武士道」のそれぞれの読書感想文を掲載しています。参考にしてください。
 なお、旧制一高の入試問題は、竹内洋「学歴貴族の栄光と挫折」 (講談社学術文庫)を参考にしました。

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